⑪子供は人生の先生。—忘れていた大切なことを思い出させてくれる存在


子供が教えてくれたことをまとめます。
子育てをしていると、ふとした瞬間に、自分の中の常識や価値観が揺らぐことがあります。
大人になるにつれて積み重ねてきた「こうあるべき」「これが正解」といった枠組みを、子供たちはあっけなく飛び越えていく。そんな姿に、私は何度もハッとさせられてきました。
育てているはずの子供に、逆に育てられているような感覚。
今では、私は確信しています。子供は、人生の先生です。
思考が抵抗を生む
彼らは、生まれながらにして“今”を生きる達人です。明日のことなんて気にしない。
眠くなったら寝て、お腹が空いたら食べ、遊びたいときに遊ぶ。
笑いたいときに笑い、泣きたいときには思い切り泣く。
その感情の表現に、一切の遠慮や恥じらいはありません。
泣いたと思ったらすぐに笑い、自分で自分の機嫌を取る。
その切り替えの早さは、
大人の私たちにはとても真似できないような“天才的”な力です。
大人は上手く未来を予測しているつもりで
いまを生きていますが、それはただの思い込みなのかもしれません。
余計な思考が抵抗を生むのです。
過去を見ない
子供たちは恨みや辛みを引きずりません。
どんなに怒られても、数分後にはケロッとしている。
愚痴も言わず、根に持たず、明るい顔でまた走り出す。
その潔さに何度驚かされたことでしょう。
私たちは成長する中で、「忘れる」ことが難しくなっていきます。
過去を引きずり、人間関係をこじらせ、余計なプライドを抱えるようになります。
でも子供たちは、軽やかに、素直に、毎日をリセットして生きているのです。
いまに過去は一切影響しない。
子供の笑顔をみていると
それが腑に落ちます。
衝動に従う
そして何より、彼らはひらめきを行動に変える力に溢れています。
「やってみたい!」と思った瞬間には、すでに体が動いている。
理由も根拠もいらない。ただ、ワクワクするからやる。
それだけ。
私たち大人が頭の中で何重にもシミュレーションしている間に、
彼らはすでに「体験」している。
そのスピード感が、時に危なっかしく見えることもありますが、
そこには生きるエネルギーそのものがあります。
子供は、良い意味で先のことを考えません。
「将来のために今を我慢する」という概念すらない。
ただ、今を生きる。今を楽しむ。
ワクワクだけで生きることを、自分に許しているのです。
正しさよりも心地よさ
私たち大人は、彼らを「まだ知らない存在」「未熟な存在」と思いがちです。
でも本当にそうでしょうか?
子供は、生きる上で一番大切なこと――
「今を楽しむこと」「良い気分でいること」「自由であること」――
をすでに知っています。
それなのに、大人になるにつれて私たちは、
常識や経験といった“知識”を積み重ねることで、
逆にその感覚を失ってしまっているのではないでしょうか。
もちろん、子供を野放しにするということではありません。
自由の中には責任が必要です。
危険なこと、他人を傷つけること、それはきちんと伝えなければいけません。
ただその伝え方が、正しさを押し付けるだけになっていないか?ということは、
常に自分に問いかけたいと思っています。
大人として伝えられること
「やらなければならないこと」は、言葉ではなく行動で示す。
そして、「言うべきこと」は、自分が良い気分でいるときに伝える。
怒りに任せて叱るのではなく、信頼の土台の上で、
子供の自由を尊重しながら導いていく。
そのバランスの難しさに、日々試されていると感じます。
思えば、私自身もかつては子供でした。
全てを知っていたはずです。
でも、周囲に合わせて、社会の中でうまくやっていくために、
少しずつ自分の感覚を封じ込めてしまったのかもしれません。
大人と子供の違いは、
「思考」という道具をどれだけ意識的に使えるかにあるのかもしれません。
子供たちは思考を持ちながらも、それに支配されてはいません。
でも大人になると、思考が感情や行動を縛ってしまうことが多くなる。
だからこそ、どんなルールや制限の中でも、
“自由”を見つける力を育てていくことが大切だと感じます。
子供たちが大人になるとき、
「自由に生きること」は“子供に戻ること”ではなく、
思考の力を使ってもう一度、自分本来の感覚に帰っていくことなのかもしれません。
その橋渡しをすることが、親としての役割なのではないかと思うのです。